· 

腹筋を鍛えるとアトピーが治る!?【アトピー発症機序理論3】

皮膚科専門医である山本綾子先生の

 

『アトピー発生機序理論』

 

の第3回目をお伝えいたします。

 

 

山本先生は、アトピー性皮膚炎の発生と身体の使い方に深く結びつきがあると考えられており、その理論をもとに患者さんの治療にあたっておられます。この考え方は、アトピー性皮膚炎で辛い思いをしているたくさんの患者さんに知っていただきたいです。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対するリハビリテーションを学んでいく理学療法士や作業療法士にとって、知らなければいけない重要な考え方だと強く感じます。

 

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園

皮膚科専門医 山本綾子先生

 

 

第3回目は、

 

『腹筋とアトピーの関係』

 

 

「腹筋を鍛えるとアトピーが治る!?」

 

 

体幹のかゆみで多いのが、背中の上部(肩甲骨あたり)と腰。

 

「ベルトがすれて腰がかゆい」という男性の話を聞くことがあります。あるいは「ブラジャーのひもが当たって肩甲骨の付近がすれてかゆいみたい」と話す女性も結構、いますよね。実際に「腰や背中がかゆいのは、すれるからだ」と思っている人は多いでしょう。でも人間の背骨の構造上、正常な姿勢であれば、肩甲骨や腰は出っ張っていないので、その部分だけかゆい、というのはおかしな話です。

 

 連載の3回目となる今回は、私が提唱している「アトピー発症機序理論」の要となる、姿勢と湿疹部位の関係、体の中心軸について解説します。

 

 

湿疹を繰り返す人は、お腹の「谷折り線」に注目!

 

 アトピー性皮膚炎を発症している患者さんの中には、ステロイドを塗って一旦治ってもすぐに繰り返すようなしつこい湿疹が、体や顔、頭に出る人がいます。実はそうした患者さんは、お腹に“ある特徴”があります。

 

 それは、お腹に深いシワがあること。まるで折り紙の「谷折り線」のように、くっきりとした線です。「それ、肥満で三段腹になっているんじゃないの?」と言われそうですが、違います。痩せ型~普通の体系の人にもぜひチェックしてみてほしいのですが、

 

お腹を曲げたときに「段々腹」のお肉に一致して、シワができていませんか?

 

そのシワこそが、谷折り線。アトピー性皮膚炎患者さんの場合、症状が軽めの人ほどシワは薄く、本数は少ないです。

 

 成人でアトピー性皮膚炎が重症の場合、くっきりと深く刻み込まれたシワが4~5本できることもあります。また、谷折り線自体は薄めでも、腹壁がしわしわとなってしまうケースもあります。どちらも腹筋が足りず、腹部が押しつぶされたことにより、シワになっているのです。

 

 この特徴は成人のみならず、乳幼児にも共通します。もし、お座りができる(腰が座っている月齢)お子さんがいつも同じ場所にしつこい湿疹ができていたり、全身がひどくカサカサしていたり、アトピー性皮膚炎と診断されているようであれば、まずお子さんを椅子や床に座らせて、2、3分ほど観察してみてください。背中を丸め、腰が曲がり、お腹が段々腹あるいはしわしわになるような場合、成人と同様、腹筋が足りないことが原因で、腹部が押しつぶされているのです。

 

 そして私自身が、今までの医学では、解明しきれていないアトピー性皮膚炎の発症機序(メカニズム)に気づいたきっかけも、このお腹の谷折り線でした。

 

↑成人男性のお腹にできている谷折り線

 

 

↑2歳児のお腹にできた谷折り線

 

 

首や腰は大きく曲げるようにできていない

 

 この谷折り線という呼称は、私が名づけたものです。アトピー性皮膚炎や湿疹の治らない患者さんを診察し続けるうちに、まるで折り紙の谷折り線のように、お腹の部分で折り曲がっていることから、こう呼ぶようになっていました。皮膚科の教科書に書かれている言葉ではないので、なじみがないでしょう。

 

 谷折り線がある=いつもその部分で体を曲げているという証拠です。

 

ところが谷折り線は、背筋を伸ばした状態でも、入っています。本来は曲げるべき部分ではないのに、いつも曲げているからできるシワなわけです。

 

 例えば体の中で、股関節や肩関節は大きく動かせるよう球関節になっているので、肩をぐるぐる回したり脚を高く上げたりできるなど、可動域が広くなっています。では背中はどうなっているでしょうか? 

 

 背中を動かす骨、脊柱(せきちゅう)は、椎骨(ついこつ)という小さな骨の集合体です。1つ1つの骨は平面になっていて、骨同士がそのまま連結するのではなく、間に椎間板(ついかんばん)があります。そして両関節面がわずかな滑り運動を行うことで、首を曲げたり、腰を曲げたりするわけです。つまり平面同士を動かしているので、大きく曲げたりはできません。

 

 

猫背は本来のS字カーブを逆転させてしまう

 

 椎骨は7個の頚椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)、5個の仙椎(せんつい)、3~5個の尾骨(びこつ)からなります。前述のようにこれらは椎間板で連結されており、頭蓋と骨盤にも連結されています。

 

 脊柱は、交互に前後に弯曲(わんきょく)して「S字カーブ」を描いています。この弯曲は、垂直に加わる荷重(頭の重み)を分散させて、できるだけ特定の場所だけに負担を集中させないように、体を守っています。

 

 姿勢が悪くなるということは、この自然の弯曲を崩し、体に負担がかかるように、無理やり曲げることになります。

 

 つまり、猫背と呼ばれる姿勢の場合、お腹を曲げ、背中を丸め、首も下に向くため、首のアーチも腰のアーチも前弯(ぜんわん/前方に凸)であるという本来の状態に逆らっていることになります。たとえて言うなら、真っ直ぐな定規を弯曲させている、もしくはゴム鉄砲のゴムをぐいーんと引っ張り続けているような感じで、その状態で朝から晩まで、ずっと首や腰の筋肉が引っ張られ続けているのが猫背なのです。

 

猫背は体をだらんとさせただらしない状態だと思っているかもしれませんが、本来の脊柱の状態からすると逆。腰や首が凝ったりするのは、当然といえるでしょう。

 

 

ホテルマンに学ぶ!? きれいなお辞儀の仕方=正しい体の折り曲げ方

 

 

 では、下を向くときは一体どこで曲げれば、体に負担が少ないでしょうか? もう1度、体の骨格を見てゆきましょう。

 

 首から腰までは積み木を重ねたような脊椎。頚椎~腰椎。その下に骨盤、そして股関節を挟んで、下肢の骨があります。折りたたみ式携帯電話の蝶番部分が、体では股関節に当たります。そうですね! 携帯電話を開け閉めするように、股関節を中心に体を曲げれば何の問題もないのです。

 

 デパートのエレベーターガールやホテルマンのきれいなお辞儀を思い浮かべてください。横から見ると、背中が真っ直ぐで腰の部分は曲がっていません。このとき、体はどこで曲げていますか? そうです、股関節です。きれいなお辞儀の仕方は、実は体にとって最も自然な下の向き方だったのです。

 

 この下の向き方は、立っているときだけでなく、座っているときも同様です。デスクワークや食事など、何度も下を向くとき、これに注意すると首や肩、腰がとても楽になります。

 

 

武道の座礼から体本来の使い方を学ぶ

 

 座ったままの下の向き方で、最も理想的な形は、武道の座礼です。正座の状態でお辞儀をする座礼は、手を太ももの股関節そばに当て、股関節から体を曲げ、背中はまっすぐというスタイル。イメージしやすいのはテレビドラマなどで見る「武士のお辞儀」でしょうか。このお辞儀の仕方は、身体機能的には自然に逆らわない、最も不要な力を使わない体本来の使い方です。

 

 股関節近くに手を当てるとき、手は八の字に向きます。肩は前に出ることなく、胸は軽く広がります。そのため、空気が吸いやすく、深い呼吸がしやすい状態となります(猫背のとき、肩が前に出て、胸は縮まり、呼吸が浅くなります)。

 

 両足は軽く開き、その隙間にお腹が挟まる感じで、上半身の重みを地球の重力に従って身を委ねるような気持ちでゆっくりと股関節から上体を倒してゆきます。このとき、お腹が軽くパーンと張っていることが感じられるでしょうか? 言い方を変えれば、胸からではなく、お腹から上体を倒す感じです。このときお腹に感じた力こそが「腹圧」であり、アトピーの患者さんや顔や体にしつこい湿疹を繰り返す方が背骨をまっすぐ保つために必要な力です。

 

 

本当に必要な“腹筋”とは腹を膨らます力

 

 姿勢が悪い人は、腰椎が真っ直ぐではありません。腰椎は前(お腹)側からの腹圧と、後ろ(背中)側からの力が等しくなったとき、まっすぐに保たれます。お腹の谷折り線がある人は、腹圧が弱く、お腹が折れ曲がり、背中が丸いという、いわゆる猫背です。

逆に猫背にならないよう背筋をピーンと張ろうとする「反り腰」(もしくは「出っ尻」)は、腹圧をかけずに背中を丸めないように腰を反ってしまうもの。一見、お尻が出て、セクシーに見えるのですが、お腹ではなく腰に力を入れているため、腰痛になりやすく、体に負担がかかります。

 

 図を見ていただくと分かるように、正常な状態だと腹圧がかかり、腰が前に出過ぎないよう、背骨をまっすぐ保ちます。腹圧が足りないと反り腰になり、お腹や腰が前に出過ぎてしまうのです。腰を触ったとき、水がたまりそうなほどへこんでいる人は、痩せているなどの体型に関係なく、反り腰ということです(正常だとほぼ真っ直ぐです)。

 

 腹筋というと「お腹を凹ます力」と思いがちですが、本当は内臓が潰れないように「お腹を膨らませる力」です。

 

 空気で膨らんだ風船をイメージしてください。風船がパーンと張っているのは、中から広げる力が働いているからです。人間の体も同様に、内臓が潰れないようにお腹を膨らませる力が必要なのです。胸部は肋骨という骨で肺などの臓器が守られていますが、腹部には骨がありません。腹部は、腹筋が内臓を守っているのです。

 

 

腹筋不足→猫背や反り腰→肩甲骨付近や腰に負担→筋肉硬化→湿疹

 

 本題からずれているように思えたかもしれませんが、ここで今回のテーマ、背中や腰のかゆみに話を戻しましょう。

 

 猫背になると、お腹を潰し、腰が出っ張り、肩甲骨部位も丸く出っ張ってしまいます。そのため、それらの部分は本来の位置からずれているため、筋肉に負担がかかり、筋肉が硬くなるため、血流が悪くなり、出っ張っている腰や肩甲骨部位がカサカサしたり、湿疹ができたりします(参照記事)。

 

 また反り腰の場合、腰に負担がかかるため、猫背とは反対に腰自体はへこんでいますが、やはり腰の筋肉が硬くなり、同じように湿疹ができます。

 

 背中や腰に湿疹を繰り返す人は、まず自分の姿勢、体の使い方を見直してみてください。実は無理のかかる体の使い方をしているはずです。

 

 

 次回は、「脂漏性皮膚炎、顔や頭の湿疹」について解説します。

 

___________________________________________________________________

以下、アトピー発生機序理論の他のリンクを掲載しておきます。

 

【アトピー発生機序理論】

 

(1)冬のカサカサ肌・かゆみ肌は悪い姿勢が原因だった!?

(2)その歩き方で大丈夫? 脛・踵が荒れる原因とは

(3)腹筋を鍛えるとアトピーが治る!?

(4)フケじゃなかった!脱毛にもつながる脂漏性皮膚炎のナゾ

(5)スマホの普及で顔の湿疹が増えた?

(6)“自然派ハンドクリーム”にも落とし穴!? 「手湿疹」の原因とは

 ___________________________________________________________________

 


【著者】

山本綾子(やまもと あやこ)

 

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園 皮膚科専門医 

 

 金沢大学医学部卒業後、金沢大学皮膚科学教室入局。多くの重症アトピー性皮膚炎の治療経験から、湿疹の出る部位と姿勢・歩き方の関係に気づき、「アトピー発症機序理論」と「運動療法」を導き出す。現在、「治らない病気」とされてきたアトピー性皮膚炎を「根治できる病気」として、全国から集まる患者を、改善・根治に導き、アトピー撲滅をライフワークとしている。 

病院外でも、アトピー発症機序理論の勉強会・運動療法のワークショップを実施。これまでに東京をはじめ日本全国で開催。 

オフィシャルブログは「皮膚科専門医 山本 綾子 のアトピー撲滅プロジェクト


 

【日本アレルギーリハビリテーション協会】

 

今後の研修会や

アレルギーセラピストコース

自律神経セラピストコース

などの予定につきましては、下記のリンクをご確認ください。